その1 株主総会決議の不存在と代表取締役の地位。 私の経営する会社は中小企業なので、株主総会を全くやらないでいたところ、先日、突然、仲たがいした当社の株主でもある弟より、株主総会決議がないことを理由に、私が代表取締役ではない等と記載された通知が来ました。放置していてよいでしょうか。

  おそらく放置していると、後日、株主総会決議取消訴訟同不存在確認訴訟等が提起されてくるものと思われます。
 現時点で、あなたが発行済株式総数の過半数を保有していたらそれほど問題は大きくありません。
 まずは、決算書類に付属されている、同族会社の判定に関する明細書で、会社の支配割合を確認してください。
 あなたが株式の過半数を保有しているのならば、今からでも株主総会を開催し、取締役選任を決議することができますし、株主総会開催前にあなたが会社を代表してした取引が、当然にすべて無効になるということもありません。
 他方で、あなたが単独では過半数の株式を保有していない場合は、第三者株主をいち早く味方につける必要があります。ここは政治の問題であって法律の問題ではありません。
 最悪、弟側に他の株主がついた場合、あなたは会社を乗っ取られることになります。どうやって第三者株主を味方につけるかは、個人個人の人的情誼が絡む問題なので一概には言えませんが、ご相談いただければ説得工作のお手伝いをすることは可能です。
 また、上記判定明細書上、あなたが単独で過半数株式を有するとされていても、その取得経緯によっては、相手方が実際の支配比率と異なるなどと主張してくることもありますので、早い段階で弁護士に相談されることをお勧めします。

その2 増資と代表取締役の地位。 私は、代表取締役であり、かつ当社の発行済株式総数の7割の700株を有しているので、今まで何不自由なく会社を経営していたのですが、このたび突然、経理を担当していた弟(当社株300株を所有)から、取締役の解任を突き付けられました。よく調べると、弟と結託した当社の顧問税理士が、当社の発行済株式総数を2倍の2000株にしていたようです。実際には株主総会で新株発行を決議したことはありませんが、新株を発行したとされる直後に1000万円の入金があり、その10日後に998万円が事業資金として出金されていました。私はどうやって弟と戦えばよいのでしょうか。

 まず、前提知識として会社法では、定款で株式譲渡について制限を課している小規模閉鎖会社(我が国の中小企業のほとんどはこれに該当します。)においては、新株発行に際しても、株主総会の特別決議を要するとされています。
 そこで、株主総会の特別決議を経ないでなされた新株発行が有効かどうかが問題となるのですが、この点について平成6年7月14日の最高裁判例は、たとえ小規模閉鎖会社であっても、個別的事情を考慮せずに、株主総会決議という内部処理を経ていない新株発行を有効としました。
 しかし、この判例は会社法制定以前のものであることから、現時点でも最高裁が同じ判断を示すかは微妙です。
 また、この事案では、払込金1000万円のほとんどが10日後に事業資金として引き出されていることから、そもそも見せ金ではないか、払込の実態がないのではないか、という別の疑問点も浮上してきます。
 見せ金かどうかは、会社資金としての運用実績や、運用期間等を総合的に考慮されることになります。
 したがって、裁判となった場合、そもそも新株発行の実態としての払込がないから、新株発行自体が不存在である、という新株発行不存在確認の訴えと、仮に新株発行手続自体が有効であったとしても(見せ金と認定されなかったとしても)、小規模閉鎖会社において株主総会の特別決議を経ていない新株発行の効力は無効であると予備的に主張することになると思われます。

その3 相続と会社支配権。 私は長男で会社の専務をしており、父が代表取締役でした。このたび父が急死し、父の有していた当社の株式700株を私と母と、唯一の兄弟である弟で分け合うことになりました。ちなみに発行済株式総数は1000株です。 ところが、株の相続割合をめぐり母と私の妻が喧嘩をし出し、母は父の有していた株700株を、全て弟に譲るなどと言い出してきました。そのようなことはできるのでしょうか。 また私の所有している株式は300株なのですが、仮に弟が会社の代表者になると言い出してきた場合、私の地位はどうなるのでしょうか?

 まず、最初の質問ですが、会社の株も立派な遺産ですので、遺産分割協議の対象となります(なお、最高裁平成26年2月25日の判例は金銭債権のように当然分割の対象となることを否定しました)。
 遺産分割協議が整わない場合、まず遺産分割の調停を申し立て、それでも解決しなければ、審判や共有物分割訴訟が提起されることになります。
 よってあなたは少なくともお母様の言いなりになって、遺産分割協議書にサインをする必要は全くありません。
 次に2番目の質問ですが、法定相続分に従うと、あなたの株式の相続分は700株×2分の1(配偶者半分・子供半分)×2分の1(子供が2人なので)ですから175株となり、これとあなたのもともと有していた株式300株を併せても過半数に至らないことになります。
 そうすると、最悪遺産分割協議がもつれて、あなたが法定相続分しか株式を取得できず、かつ、お母様と弟様が、あなたに敵対した場合は、弟陣営に会社経営の主導権を握られてしまう可能性があります。

 そうならないためにあなたとしては、遺産分割手続で、これまでの会社に対するあなた自身の実績を強調して寄与分を主張するか、共有物分割訴訟で、対価を用意して株式の多くをあなたに帰属することを求める等の手立てを用いて、過半数の持分を死守すべきです。
 なお、相続人に対する株式の売渡請求については項を改めます。

加藤法律事務所

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