はじめに

 交通事故は、誰でも被害者となりかつ加害者となり得るものです
 ところが、交通事故による損害について弁護士を付けて解決をしようとされる方は、任意保険会社の弁護士費用特約などの存在があるにもかかわらず未だ少数のようです。
 しかしながら、相手方の保険会社も当然のことながら利益追求を目的とした団体ですので、なるべく低い金額で示談をした方が、交渉担当者としては社内で評価されることになります。
 他方で、被害者にとっては、通常、慣れない交渉事であるため、示談額の相場や治療期間など知らないことばかりです。
 ここで保険会社担当者と、被害者との情報格差が生じます。
 資本主義社会において「知らない」ということは、=「損をする」と言っても過言ではありません。また多くの保険会社では、当事者による交渉段階、弁護士による示談段階、弁護士による訴訟提起後の進捗状況に応じて、それぞれ決済額が異なるとされております(厳密に言えば保険会社の担当者によっても決済枠が異なるようです...)。そのために交通事故による示談交渉(ないしその後の訴訟)においては、弁護士を付けるのが合理的なのです。


治療段階の受任について

 当事務所では、未だ治療期間中に受任させて頂くことがしばしばあります。これは治療期間中でも治療期間に関する保険会社との折衝、MRI等後遺症認定に向けての証拠収集活動、後遺症障害診断書の作成に関してドクターへのご依頼文の作成等、弁護士にできることが多いためです。

整骨院との併用について

 被害者の中には、整形外科と整骨院との併用を望まれる方もいらっしゃいます。ところが「整骨院に行き、かえって症状が悪くなった」という愁訴もみられることから、整形外科の中には整骨院との併用を認めない所も多いようです。しかし、後に触れる後遺症との関係で重要なのは、整骨院は、保険会社から治療費を支払って貰うための施術証明書は作成できるものの、後遺症障害診断書は作成できないということです。
 結果、整形外科の通院を数ヶ月止めてしまい、いざ後遺症障害の申請をしたくても、整形外科からは断られ、結局被害に見合う後遺症障害を主張することが困難になるという事例が散見されます。
 訴訟提起する場合、必ずしも自賠責による後遺症障害認定を受けている必要はないのですが(実際当事務所は「非該当」でも、多くの事案において裁判により後遺症認定を得ております)、その場合でも、医師作成にかかる症状推移についての診療録がないと、やはり後遺症を主張するのは現実には困難です。
 よって当事務所としては、後述する後遺症障害の申請(ないし完治)まで、整形外科に通院されることをお勧めしております。どうしても整骨院にも通院されたい場合は、併用を認められている整形外科に通院された方がよいでしょう

後遺症障害について

 後遺症障害とは、治療を継続しても、症状の改善が認められない場合に、それ以上の治療を続けても仕方がないから、後遺症として認定して、認定された等級に対する後遺症を支払うという制度で、後遺症認定自体は自賠責の調査事務所というところが実施しております。
 後遺症障害診断書という定型の書式があり、ドクターに記入して頂くことになります。
その際、まず「自覚症状」の欄に被害の実態を、できるだけ具体的に記入して頂くこと(ex「気圧の低いときに頚部付根付近に継続した鈍痛がある」「5分以上歩くと、右下肢にびりびりとした痺れが生じ、以後歩行困難になる」など)が重要です。記載が抽象的で、あっさりとしたものだと被害の実態が伝わらないからです。
 さらに、「自覚症状」を基礎づける「他覚所見」の欄に、外傷性の所見が認められる場合、当該箇所の特定して頂くことはもちろんですが、例えば仮に外傷性の所見でなく、加齢性の基礎疾患を認めるに過ぎない場合も、当該疾患の内容(ex「MRI上、C5/6の椎間板軽度膨隆が認められる」等)を記入していただくようお願いしております。
 自賠責の段階ではなかなか難しいですが、訴訟をすると、加齢性の基礎疾患を基礎として現症状が出現していることの医学的な説明可能性があれば(診断ではなくとも)、後遺症障害の14級認定(「局部の神経症状」等)相当の慰謝料は認められます。
 このような後遺症障害認定上の留意点について残念ながら一般に医療現場での習熟性はがないため、当事務所から特に、後遺症障害診断書作成に先立ち、依頼者の現症状に鑑みて、認定のポイントとなりそうな点を、参考文献等を添付のうえ、ドクターにお願いの文書を作成している次第です。 
 

費用について

 任意保険会社の弁護士費用特約に加入されている場合は、上限300万円まで同保険で賄われますので(通常事件で弁護士費用が300万円を超過することはありません)、ご本人の自己負担なく、弁護士に依頼することができます。弁護士に依頼後は、保険会社担当者との煩わしい交渉事等も全て弁護士が代行することになります。
 弁護士特約に加入されていない場合、当事務所規程に従い弁護士費用をお支払頂くことになりますが、当初着手金については、通常10万円~30万円程度で受任させて頂き、事件終了後に成果の中から残金をいただくことで、被害者の方に依頼しやすい環境を作るよう努めております。
 また、既に、保険会社から一定額の示談額の提示がある場合、当初着手金は0で、増加分についてのみを基準に20%~30%(訴額及び、訴訟手続の有無による)程度の報酬をいただく契約もご提案させていただいておりますので、保険会社の提示金額について、専門家の意見を必要とされる方もご気軽にご相談ください。


個別症状について① 鞭打ち、ヘルニア、脊柱管狭窄等

  一般に鞭打ちと呼ばれている症状については、事故後3ヶ月程度で完治するようです。完治しない場合、椎間板が突出しているとか脊柱管が狭窄しているとか、何らかの加齢性の基礎疾患があり、もともと無症状であったものが事故を契機として有症化している場合がほとんどです。
   このような場合でも訴訟をすれば、事故に起因した現症状であることについて多くの場合説明可能性があるため、事故と現症状との因果関係を肯定され、後遺症障害の認定がなされます(ただし14級のみです)。
   また、単に加齢性の変性に過ぎない場合、それだけでは基礎疾患とはならず、素因減額(被害者側の事情により損害が拡大したとして、損害の何割かを自己負担とする考え方)の対象ともなりません。
   しかし、自賠責の事前認定では、仮にこれらの症状が認められたしても多くの場合「非該当」の回答になります。またそれ以前に、前述のようにこれらの加齢性の基礎疾患について後遺症障害障害診断書に記載がない場合も多いです。
    

  
 

個別症状について②骨折後の癒合不全等

    骨折後の癒合不全等に起因する関節機能障害(可動域制限)については、後遺症障害診断書に、各関節の自動運動、他動運動の測定結果をドクターに記入していただくことになります。
 しかしながら、このような記載があるにもかかわらず、陳旧性の症状であり、事故に起因するものとは認められないと自賠責事務所より回答されたこともあります。
  もちろん裁判では事故との因果関係が認められたのですが、自賠責の回答を覆すためには、主治医の協力が必要であり、そのためには、本来の認定基準と問題の所在を指摘して、自賠責の認定がいかに不当かということを主治医の先生に理解していただく必要があります。
  このほか関節機能障害に比べて椎体の変形などは、自覚症状が乏しい場合も少なくありませんが、脊椎(頚椎、胸椎、腰椎の総称)の圧迫骨折痕は運動障害の有無に関わらず後遺症障害11級7号の認定対象となります。この点についても自賠責では事故と無関係とされたものを訴訟で争い、弁護士照会等を通じて、11級相当の認定を得たことがあり、いかに自賠責の認定が適当かを痛感させられました。
   

個別症状について③CRPS、RSD

複合性局所疼痛症候群と呼ばれる本症状について、自賠責は皮膚変化、関節拘縮、骨の萎縮という3徴候を認定要件としており、かなり厳格な内容です。かつて担当した事案においても、このような厳格な要件は満たさず、当初は14級認定でした。しかしながら風呂に入れない等、その症状は熾烈で到底、「局部の神経症状」という程度のものではありませんでした。当然、裁判になり被害の実態と専門の麻酔科医の協力等を得て、8級相当の内容で和解をすることができました(担当したもう1件は、保険会社が頑固で判決になりましたが、尋問の結果を踏まえてRSDに罹患していることを前提とした賠償額を認定していただきました)。当職の担当したサンプルは少数ですが、麻酔科医の見解として、実際の症状は様々で、これらの典型症状が揃うことはむしろ稀であるとのことでした。


 

個別事案④死亡事案について

 死亡事案において、特に争点となり得るのは、逸失利益の計算方法です。逸失利益とは、当該事故がなければ得られたであろう、稼働利益をいい、所定の計算方法があります。若年者の場合は、裁判手続きの場合、平均年収を基礎とする場合も多いのですが、保険会社との任意交渉の場合は、実収入を基礎とされます。当地の場合、若者の給与が全国平均よりも低額な場合が多いことから、その差額だけで1000万円単位の金額になることが少なくありません。
 また、主婦は、家事について全労働者の女性平均値を採用するのが本来なのですが、このあたりも保険会社との任意交渉だと、同平均値を大幅に下回る彼らの内部決済基準で提示される場合が多いようです。
 この他、死亡に限らず、高度障害の場合、本人慰謝料とは別に近親者固有の慰謝料というものが認められます(民法711条参照)。このあたりは代理人弁護士が就いていても、意外と請求項目から漏れている場合が多いようです(裁判所の和解案等では本人慰謝料と一括して提示されることもあります)。