民事裁判のIT化について

2019年09月22日

 現在、裁判所内で民事裁判をIT化することが準備されており、近い将来、訴状を紙ではなく電子媒体で提出することや、審理は、裁判所と両代理人のパソコン画面を通じて、データ上に互いに書き込みながら進行することが予定されております。
 IT化自体、諸外国の趨勢でもあり、反対するところではないのですが、そのやり方については少し不安に思うところがあります。
 まず、データ上の書き込みというのは、裁判所がシステムを独自開発せず、当面、マイクロソフト社のteamsという、既存のソフトウェアを利用して行うことになるのですが、もともとこのteamsは、読んで字のとおり、仲間内でのソフトウェア開発やらなにやらを想定しており、対立当事者間での使用を予定しておりません。そのため、色々なボタンがあるのですが、「試しに押してみたら相手当事者や裁判所に、見せるつもりではなかった資料が閲覧できる状態になっている」といった怖さがあり、システム導入まで、弁護士は使い方についてよほど習熟しておく必要がありそうです。
 また、現時点で多くの(地裁案件で約半数?)の民事事件において、弁護士をつけずに当事者本人が訴訟に出てこられているのですが、訴状提出から審理まですべて電子媒体で進めてゆくため、本人確認が十分にできない可能性もあります。
 より根本的に不安なのは、マイクロソフト社のteamsというフリーソフトに一国の三権分立の一翼を担う裁判所が、ただ乗りしてしまって本当に大丈夫なの?という点です。
 訴訟手続における本来、開示対象とはならない情報は、同社の海外でのサーバに蓄積されるわけでしょうし、同社からの故意の漏洩がないにしても、その情報は現在と同じ水準で管理できるのかどうか、自分にはよくわかりません。
 このほか、海外での独占禁止法案件として、google社等とともに、しばしば登場してくる同社が、公取委による排除措置の後の不服手続として裁判所に係属することも、あり得ないことでは決してないと思います。そのようなときに、teamsを使用することで審理の公正が外見的に確保できるのかどうか、同社としては、裁判所が不利な判断をした(しそうな)場合、報復的措置としてフリーソフトであるteamsの提供を終了する(ちらつかせる)、という選択肢もあり、万一実際にそのようなことをされたら、日本中の裁判がストップするという未曽有の事態になってしまいます。要するにタダより高いものはないのでは?と思うのです。
 穿った見方をすれば、最高裁としては、とりあえず同社のteamsでIT化を始めてみて、何か不都合が起きて国家賠償請求をされ、裁判所が負けた場合に、それをネタに独自システムの予算獲得を働きかけようとしているのではないか、とすら邪推してしまいます(第3フェーズ以降では裁判所が自前のソフトを開発するという話もあるようですが、実際のところはよくわかりません)。
 幸い?当地宮崎は、数年前に宮崎地裁が国家賠償請求で宮崎家裁を負かす、という珍事が起きた土地です。その時がきたら担当裁判官が勇敢な判断をされることを期待する次第です。